最高裁判所第一小法廷 昭和25(オ)86 判決
主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理 由
上告人訴訟代理人弁護士長尾文次郎の上告理由は末尾添附別紙記載のとおりであ
る。
しかし、上告人が訴外Dとの婚姻を承諾したのは上告人がEから相続した財産を
上告人の子女において相続することができるように処置することに親族間の取極が
あり、上告人は、しかあるべきことを信じてD家に嫁したものであるという事実は
原審の全く認定していないところであつて、かかる事実の存在を想定し、これに基
いてなされた所論は、前提を欠くといわなければならない。また、仮にかかる事実
が存在したとしても、若し、上告人が、本件のごとき結末になることを知っておれ
ば、他に婚嫁することに反対しE家に留まり、入夫婚姻の方法をとったであろうと
の所論については、右のように措置するがためには、入夫婚姻の方法が唯一の方法
ではないのであつて、一旦他人を家督相続人に指定して隠居し、婚姻後出生した子
女を右家督相続人の養子とする等の方法もありうるのであるから、上告人のFに対
する委託事項中に家督相続人の指定を含むとすることが社会通念を無視したもので
あるとは論断し得ないのである。
なお当時における上告人の年令、境遇がすべて所論の通りであつても、当時二十
二才程度の女性として自己が他へ婚嫁するに当り実母Fに対し相続人指定届出の委
託を包含した包括的委託をすることが経験上あり得ないとは断定し得ない。故に原
審りの判断は、経験則に違背することなく、理由のそご又は理由の不備があるもの
ではなく論旨は理由がない。
よつて民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとお
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り判決する。
最高裁判所第一小法廷
裁判長裁判官 入 江 俊 郎
裁判官 真 野 毅
裁判官 斎 藤 悠 輔
裁判官 岩 松 三 郎
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